NAIGAI SRF
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このカメラを語るには、先ずFujica ST-Fという特異なカメラに言及せざるを得ない。

世界初フラッシュ内蔵一眼レフ(これは事実と異なるという指摘もある)。しかもプログラム式ミラーシャッター搭載...

ミラーの動作がシャッターの役割を兼ねており、しかも露出制御はプログラム? なんだか凄いが、実は全然凄くないのであった...
一眼レフである。しかしレンズ交換はできない(専用1.5倍レフコンバーターが発売されていた)。おまけに寄れない(最短撮影距離は1m)。これでは同時期に販売されていたレンジファインダー機と比べても1眼レフであることのメリットが見つからない。巻上げは背面ノブ式で使い捨てカメラのような操作感覚。プラスチックボディで1眼レフとしては最軽量の部類だろう。
当時の広告ではテレビ画面が簡単に写せることを売り文句にしていたようだ。なるほど1眼レフなら近距離でもファインダーの視差は無いからテレビ画面を写し込み易いとは言える。しかし最短1mというのは当時の小さいテレビ画面を捉えるためには少々キビシイものがあったのではないか。

さてこのNAIGAI SRFだが、どうみてもこれはFujica ST-Fであって、その生産が合法か違法かはともかく、ほぼそっくりなのである。
しかし単に全く同じもののロゴ違いという物件ではない。いくつか異なる点を列挙すると、先ず、露出計ボタンの位置が違っておりボディ上部シャッターボタン手前にある。シャッターボタンの受け皿の形状も異なる。フィルム確認窓が無い。ST-Fと違ってフラッシュがチャージされると点灯するボタンが無く、また鏡胴部分にフラッシュマチック機構表示が無いぞと思っていたら、この内蔵フラッシュは、なんとダミーだった... FLASH ONの表示まであるというのに。
さらにレンズ。NAIGOR LENSと表示があるが、これが41mmという実に中途半端な焦点距離(ST-Fは40mm)。レンズの構成は不明(ST-Fは3群4枚)。内部構造はほぼ同じだが、部品のメーカーは異なっていた。シャッターの構造はST-Fと同じだと思うのだが、何故かスペックが異なる。ST-Fは最小絞りがF22、1/60〜1/750秒というのが公称値だが、SRFは最小絞りが16まで。この微妙な違いが何に由来するのか、よくわからない。
公称ではあくまでもこれはプログラムシャッター。しかし内蔵TTL露出計はシャッターに連動してはいない。スイッチを押すとファインダー内に+○−の表示が出るのみ。これが○に合うよう絞り値を設定するわけである。ライトヴァリュー方式と言ったほうがよいだろうか。

内部構造を見るため分解してみたが、驚いたことにプログラムシャッターというものの全くエレキ仕掛けではなく、実に単純な構造なのだ。本機のミラーシャッターは、例えばイハゲーのエクサのシャッターなどとは全く異なる構造である。その構造を文章で説明するのは難しい。レンズ後部には上下2本のレバーがあり、上のレバーはミラーが稼動する範囲と時間を決定する。シャッターをきるとミラーが上昇しこのレバーにあたって戻る構造で、絞り開放ではミラーが最上部まで上昇する。つまり絞るとミラーは途中までしか上がらないわけである。ミラーの裏側というか下部には五角形の切り抜きがあり、ミラーが上昇する位置によってレンズからの光量が変化し、これとレンズ後部下のレバーが隠すレンズの面積との組み合わせで露出が決定する。このように書くとややこしいが、これで大丈夫なのかと思うほど構造は簡単なのだ。
ミラーはバネで稼動し速度は一定であるが妙に稼動速度が速く、バチンという大きな作動音がする。不釣合いなほど立派なプリズムを搭載しておりファインダーは明るい。しかし本機は蒸着面が一部腐食しておりファインダー内に黒い線が見える。これがとても鬱陶しい...

ST-Fは1979年に発売されたが1年足らずで生産は中止されたらしい。SRFがどの時期に販売されていたのかは知らない。このカメラ、香港製かと思いきやMADE IN JAPANの表記がある。日本では二光通販で売られていたという情報もある。ほぼ同スペックでYUMICA RFX-1という物件も存在し、また同じNAIGAI SRFでもフラッシュが「ホンモノ」でレンズも40mmと、ほぼST-Fと同スペックのものも存在するようだ。ハニメックスが同じようなカメラを販売していたという話もある。この辺りは謎が多いが、こういったカメラの生産経緯がなんだか気になって仕方が無いのである...

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